事務所名 東京GODO会計 税理士 多勢 陽一 |
所長名 多勢 陽一 |
所在地 東京都江東区亀戸 6-2-3田辺ビル6F |
電話番号 フリーダイヤル 0120-77-2514 |
FAX番号 03-3684-2740 |
Eメール tase-yoichi@tkcnf.or.jp |
業務内容 ・パソコン会計による月次決算支援業務 ・独立、開業支援業務 ・経営相談に関する業務 |
東京税理士会 江東東支部所属 |
右肩上がりの町工場が
経理の劇的効率化に成功
東京都江東区の荒川沿い、中小製造業が集積する地区に本拠を構える竹石アロイツールは、金型部品の製造を主業務に右肩上がりを続ける優良企業だ。そのベースには、経理業務のDXによる管理体制の効率化、そして資金の流れの〝見える化〟があった。
「おかげさまでここ数年、社内のデジタル化、ペーパーレス化がすごい勢いで進みました。今、昔のように手書き中心の業務形態に戻れと言われたらぞっとします」というのは、竹石アロイツール工業の矢作将親社長。
数年前までは、オフィスは紙であふれていた。経理の流れは一応できていたものの、そのすべてのプロセスがアナログ。請求書は電卓をたたきながら作成し、帳簿関係も手書きだったという。7年前に入社したという森愛実係長はこう述懐する。
「入社当時は、先任者の方にすべて手書きで教えてもらい、経理ソフトも使用していませんでした。また、利益は出ているのに、手形を割って資金をつくっていたので、なぜなんだろうと……。ところが、その後ほどなくして東京GODO会計さんに税務顧問になっていただいてからガラっと変わり始めました」
左から森愛実係長、矢作将親社長、林景子巡回監査士
有限会社竹石アロイツール工業
業種:金型部品等製造
設立:1980年10月
所在地:東京都江東区東砂4-1-12
売上高:約10億円
従業員数:20名
会計システム:FX2クラウド
竹石アロイツール工業は、金型部品製造を主業務とする従業員20人ほどのいわゆる町工場だ。しかし、少数精鋭の優良企業で、業績は右肩上がり。国内では精密加工を可能にする設備機器類を多数そろえ、また、海外では中国、ベトナムでの生産も行う。大量の注文は海外で、急ぎの案件や高度な技術が必要なものは国内でとすみ分け、顧客のニーズに柔軟に対応する体制を作り上げた。
オーナーで創業者の竹内澄夫会長は、時代の変化を鋭敏にとらえ、早くから海外生産を実践し、さらには、積極的な人材の登用にも取り組んだ。社員のなかから矢作氏を社長に抜擢し、税務・会計を東京GODO会計に委ねたのも竹内会長の判断だ。
そうした流れのなか、入社してきたのが冒頭の森係長。コンタクトレンズ店で経理を担当していた森さんは、偶然か必然か、ある縁故によって引っ張られるように同社に転職をする。
新しい社長、経理担当者、そして会計事務所というパズルのピースがぴったりとはまり、竹石アロイツール工業は、デジタル化へと動き出した。
東京GODO会計の林景子巡回監査士・社会保険労務士が同社の税務と会計をコンサルティングしながら、自計化(企業が会計ソフトを導入して自社で経理業務を行うこと)を進めるなか、ターニングポイントになったのは、2022年3月。会計システムのスタンドアロン型(『FX2』)からクラウド型(『FX2クラウド』)への変更だった。森係長は言う。
「その際に銀行信販データ受信機能を利用できるようにしたのが、本格的なデジタル化へのきっかけだったかもしれません」
銀行信販データ受信機能とは、複数の金融機関(銀行や信販会社)から、インターネットを利用して取引データを受信できる機能。その取引データをもとに学習機能を利用して仕訳を簡単に計上できる。
林巡回監査士が言う。
「当社では月の仕訳が1000件くらいあるのですが、その6~7割はこの機能を使って仕訳を計上しています。これが画期的な効果をもたらしました」
とりわけ象徴的だったのが「輸入消費税」の扱いだ。
竹石アロイツール工業では、中国の協力工場でつくった製品を輸入するという作業が必要である。その際、従来は運送会社に支払う際に、その運送会社から輸入消費税も一緒に請求され、その手数料と消費税を、毎月一度まとめて支払う必要があった。森係長が続ける。
「それを、製品が関税を通過すると同時に当社の口座から消費税が引き落とされる〝リアルタイム口座方式〟という仕組みに切り替えることで、とても楽になりました。それまでは、月に100件くらい手入力していたし、1件1000円の手数料も運送会社に支払っていました」
製品が税関を通るたびに、口座から消費税が引き落とされ、銀行信販データ受信機能からそのデータが上がってきて、仕訳の基礎データが自動生成されるので、森さんはそれが正しいかを確認して、クリックするだけでよい。しかも、月に10万円前後の経費削減効果も出るという、一石二鳥の効果があった。
各種マシニングセンターや検査設備がそろう
さらに、並行して取り組んだのが、電子帳簿保存法(電帳法)とインボイス制度(23年10月スタート)への対応だった。
電子取引については、22年1月から紙に出力しての保存は認められず(宥恕期間2年間)、電子データのまま保存する必要がある。『FX2クラウド』の証憑保存機能(※)を利用すれば、そこに無理なく対応できる。
林巡回監査士が言う。
「さしあたり、業務において頻繁にメールでやりとりされている輸入の関税関係の書類を電子データで保存する必要がありました。それにプラスして、やはり電帳法のスキャナ保存制度に対応すべく、紙で受け取った請求書や領収書などの書類をスキャンし、電子データとして保存する取り組みも進めました」
保存されたデータは、証憑保存機能によって取引先名、日付、金額、消費税などが自動で読み取られ、仕訳の基礎データとなる。また、証憑と仕訳が紐づけてあるので、証憑を探す手間がなくなり、チェック業務が大幅に効率化できた。
続いて取り組んだのが、自社からの請求書発行のデジタル化だった。森係長が説明する。
「22年の終わり頃、まず、当社の販管システムの改修を行い、すべての請求書のメール送信を可能にしました。そして、その請求書データを『FX2クラウド』の証憑保存機能を使って取り込んで保存。仕入れの領収書、請求書と同じく、証憑から仕訳の基礎データをつくることができるので、以前と比べると本当に楽になりました」
発行すべき毎月の請求書は約150枚。以前は、紙で出力して社判を押し、手書きで宛名を書いて封入・送付と、1日仕事だったという。今では、ワンクリックで完了。
請求書のメール発送による思わぬメリットもあった。従来は、営業を通した顧客とのやりとりが必要だったが、先方の経理担当者と直接コミュニケーションをとることができるようになった。これによって書類の内容についての細かな齟齬も、ダイレクトな解決が可能になった。
『FX2クラウド』導入には、もちろんインボイス制度への対応という意味合いもあった。T番号の自動読み込みはもちろん、仕入れ先が適格請求書発行事業者かどうか自動判定され、修正が必要な仕訳は一覧表示される。また、会計帳簿から消費税申告書まで一気通貫で処理されるので、経理担当者の行うべき作業はほとんどない。
また、業績確認という意味でも、クラウド化の威力は抜群だった。矢作社長は言う。
「私がどこにいようと、パソコンを開けば最新の業績が確認できるようになりました。異常値を示す勘定科目に対して伝票にまでさかのぼってリサーチし、即座に打ち手を指示することが可能で、これには大きなメリットを感じています」
ベトナム工場の従業員たち
いずれにせよ、2年以上前から本格的に始まった、竹石アロイツール工業の経理業務の合理化作戦は、ここへ来てほぼ完結したといえるだろう。「紙であふれていた」5年前の同社の姿はもはやない。結果として、経理業務の工数が大幅に減り、森係長の業務に余裕ができた。矢作社長が言う。
「森係長はとても優秀な社員なので、経理業務以外に図面製作や労務関係の仕事もこなしてきたのですが、加えて最近では、本格稼働したばかりのベトナム現地法人の経理など管理業務の整備をお願いしています」
実際、森係長は、取材の日の深夜の羽田発航空便でベトナムに飛び立った。数週間滞在の予定だという。
「現在、私と森係長が交代でベトナム現地法人に行き、管理業務の基礎固めを行っています。もはや、森は経営陣の一角という感じです」と矢作社長。
森係長は、デジタル化と同時に資金の見える化にも一役買っている。以前、同社では「借りたお金がいつのまにかなくなる」という状況があり、その反省から、当座預金だけに資金を集めるのではなく、口座を用途別に分けながら、資金の流れを明確化する仕組みをつくり込んだのだ。
「管理全体の仕組みをベトナムでもつくってほしい」と期待をかける矢作社長。
森係長は、矢作社長の期待に応えながら、ベトナムから『FX2クラウド』を駆使して本社の経理業務も継続して行っている。まさに八面六臂の活躍だが、これもまた、クラウド化の大きな効用といえるだろう。
※証憑保存機能…電子取引データ(PDF等)や紙の証憑を読み込み、TKCのデータセンター(TISC)に電子データとして保存。保存したデータはTKC会計システムに連携し、仕訳入力に活用できる